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シマダノメ

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シマダノメ スペシャル・コンテンツ
トピックとIPで振り返るJ3優勝&J2昇格の軌跡

日ごろからギラヴァンツ北九州に寄り添って支援に努めてこられたサポーター、スポンサー企業の皆様、J3優勝と4年ぶりのJ2舞台復帰となる昇格、おめでとうございます! 今回の非常に喜ばしい結果を受けまして「シマダノメ」からスペシャル・コンテンツをお届けします。シーズンを5節ごとに区切り、記者・シマダが挙げた、その間のトピックスと印象に残った選手(Impressive Player=IP)から歓喜に至る軌跡を振り返る企画です。ここに挙がるトピックもIPもあくまでもシマダ個人のチョイスによるものですから、「いや、そうーじゃないやろ?」との声が挙がるのも当然です。皆さまにはシマダのチョイスをダシにしてそれぞれの記憶を引き出しながら独自のトピックやIPを挙げて、思いっきりニヤニヤしながら、今シーズンを振り返っていただく年末企画なのです。

第1節~第5節
(戦績/4勝1分け)

  • Topic① 開幕4連勝
  • Topic② 開幕3連続無失点
  • Topic③ クラブ連勝記録更新ならず

IP①
#DF6 岡村和哉 選手

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IP②
#FW9 ディサロ燦シルヴァーノ 選手

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小林伸二監督を迎え新体制で臨んだシーズンは最高のスタートを切りました。4勝1分け、5戦負けなし。昨年最下位で終わったチームがいきなり首位に立ったんです。「今季は攻守において、アグレッシブなプレーを追求し続ける」と宣言した小林監督の下、足を動かして、ボールも動かすサッカーの実践に選手は努めたのですが、当たり前と言えばそうなのですが、この頃のチームは未熟でした。高い位置でボールを奪って、高い位置でボールを保持して、主導権を握り続けるという小林監督が掲げる理想が形になるまでには至っておらず、ほとんどの試合で必ず相手に押し込まれて我慢する時間がかなりあったのです。

それでも、5試合のうち開幕から3試合連続の無失点勝利を挙げられたのは、#GK13高橋拓也選手、#DF5寺岡真弘選手、#DF6岡村和哉選手の守備のトライアングルが踏ん張ったおかげでした。特に昨季までJ2のカマタマーレ讃岐に在籍、その讃岐で毎シーズンのように残留争いという厳しい戦いに身を置いてきた岡村選手の精神性は強靭でした。「讃岐では、多くの試合で、90分のほとんどが耐える時間だったんです。だからね、これくらい楽勝ですよ!」と笑う岡村選手の劣勢時に発揮される驚くべき耐性能力が印象に残っているのです。

経験豊富な守備陣の頑張りが好スタートを支えてはいましたが、新しい風もしっかり感じられました。FC東京U-23との開幕戦では#DF2新井博人選手、#MF14新垣貴之選手、レレこと#FW9ディサロ燦シルヴァーノ選手が先発、第3節のガンバ大阪U-23戦では#DF26打越大樹選手もスタートからピッチに立つなど、今季加入の新人たちがいきなりJデビューを飾ったのです。

中でもレレ選手は、今季チームのオープニングゴールを決めたという点で印象的でした。FC東京U-23戦の開始10分、#FW11池元友樹選手が左サイドから上げたクロスを、ドンピシャリのタイミングで合わせたヘディングシュートは何とも美しいゴールでした。レレ選手は第2節から3試合欠場、第5節の復帰戦で途中出場ながら貴重な同点ゴールを挙げて勝点1ポイントの獲得に貢献。それでも「自分はゴールを挙げたけれどチームが勝たないと意味はないし、連勝がストップしたことは正直悔しかった」と、クラブの連勝記録を「5」に伸ばせなかった悔しさを素直に表現したことも覚えています。


第6節~第10節
(戦績/1勝2分け2敗)

  • Topic① 今季初の敗戦
  • Topic② 令和最初の勝利
  • Topic③ メンバー入れ替えによる第1次ステップアップ期

IP①
#MF25 國分伸太郎 選手

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IP②
#MF7 茂平 選手

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第6節のアスルクラロ沼津戦で今季初の敗戦(0-2)を喫し、得失点わずか1点差で首位の座をセレッソ大阪U-23に明け渡しました。第8節のザスパクサツ群馬戦で“令和最初の勝利”を挙げたのですが、この期間の勝利はその試合のみで5試合の成績は1勝2分け2敗と、勝点の積み上げに苦労しました。しかし、中身を見れば第一次ステップアップ期とも言えるのでした。

沼津戦の敗戦を機に小林監督は先発メンバーを大幅に入れ替えます。第7節のブラウブリッツ秋田戦では#MF25國分伸太郎選手が第4節・SC相模原戦以来となる先発、2年目の#MF15野口航選手と#MF22藤原奏哉選手がシーズン初先発、ルーキーの#DF20河野貴志選手がリーグ戦デビューを飾りました。開幕からの好調を支えてきた選手を思い切って代えた小林監督の狙いは、もちろん対戦相手のスカウティングの裏をかく狙いもあったと思いますが、ポジション争いに刺激を入れること、それによって競争意識が高まり、チームの総合力アップにつながるとの目論見もあったのです。

チームが軸とする戦い方は継続しながら、メンバーを入れ替えることは各ポジションにつく選手の個性が変わるということであり、その変化が守り方、ボールの動かし方といった細部の変化につながり、それがチーム総体として表現するサッカーの変化にも通じる。この期間の成績は確かに芳しくはありませんでしたが、そこで表現されるサッカーの質とレベルは変化とともにレベルアップしていきました。前から相手ボールに圧力を掛けてボールを奪う守備の精度、連動性は上がり、ボールを奪った後に保持する時間は伸び、そこから仕掛ける攻撃のパターンは増え、チャンス数もアップしました。フィニッシュの精度に課題はありましたが、攻守のレベルが上がっていく手ごたえが感じられた時期でした。

そんな中で印象に残った選手は2人。まずは國分選手。左サイドハーフに入って左右両足で自在にボールを操れる高い技術力とパスセンスで多くのチャンスを創出しました。特に第7節の秋田戦では得点には至りませんでしたが、鋭いスルーパスで2度の決定機をつくり存在感を示しました。「足下の技術が高い選手、トラップがうまい選手はたくさんいる。でも、ゴール前の、相手にしたら本当に危険なところに正確に、自分のイメージ通りのパスを通せる選手が上に行ける選手だと思っている」との言葉通りの危険なパスの供給でチームの攻撃にパワーと多様性をもたらしたのです。

もう一人が茂選手です。開幕から左サイドハーフとして先発していましたが、第9節のロアッソ熊本戦では何と、#DF3福森健太選手に代わって右サイドバックとして出場。結果的に敗れたこのゲームで、自身リーグ初となる意地のゴールを挙げたのです。記念の一発を決めた茂選手でしたが、「何とか追いつきたいという気持ちが強かったのでゴールパフォーマンスをする気になりませんでした」と、試合後はゴールの喜びよりも勝利を逃した悔しさが上回っていたようです。この茂選手の右サイドバック起用は、ポジション争いを促す意味もありますが、選手起用や交代カードの切り方も含めて、あくまでもアグレッシブな選択をするんだ、という小林監督の意志の表れに思えたという点で印象に残っています。


第11節~第15節
(戦績/3勝2分け)

  • Topic① 攻めて圧倒のスタイルへ
  • Topic② 2トップ、覚醒へ!

IP①
#FW11 池元友樹 選手

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IP②
#FW18 町野修斗 選手

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第6節から第10節までの「もがきと変化」が結果として表れた時期です。特に第11節のY.S.C.C.横浜戦、第12節の福島ユナイテッドFC戦、第13節の藤枝MYFC戦は前からのプレスで相手ボールを奪って、高い位置でボールをつないで主導権を握るスタイルで戦うことができる時間がかなり長くなっていました。

その3試合はいずれも無失点に抑えていますが、開幕4連勝を飾った時の無失点試合と異なるのは、引いて構えて、耐えて守っての無失点ではなく、ボールと主導権を握って相手の攻撃時間を減らすことで失点の可能性を抑えたことによる無失点だったことです。今季2度目の「3試合連続無失点」となった第13節時点で18チーム中、唯一の一桁失点(7失点)であることで「北九州は堅守のチーム」との言い方をされるようになるのですが、そこに「構えて守る」のイメージが含まれていたので、少し違和感を覚えたことが印象に残っています。

そして、第14節のいわてグルージャ盛岡戦(3-2)と第15節のAC長野パルセイロ戦(2-2)では連続で複数失点。失点の理由はそれぞれで異なるのですが、次の期間で陥ることになる足踏み状態の要因となる陰がそこに見えていたのです。

岩手戦の2失点はいずれもCKからのものでした。北九州が主導権を長く握ることで攻撃の時間をなかなか持てない相手チームはセットプレーを貴重な得点機会ととらえて、そこにアイディアと労力を掛けるようになってくるのです。そして、長野戦の失点はいずれもこぼれ球への反応で相手に後れを取りゴールを割られる形でした。あと一歩ボールに寄せられなかったのは疲労によるところが大きかったのだろうと、小林監督は推測していました。長野戦は天皇杯2回戦のヴィッセル神戸戦から中2日で行われた試合。格上の神戸に対しては自分たちの現在地を確認するために全力でぶつかったのですが、その代償が長野戦で表れる格好となったのです。

攻めて圧倒するスタイルの確立に向けて手ごたえをつかむ一方で夏場の疲労による運動量の低下という懸念材料が見え始めたこの時期ですが、今後の戦いに向けての明るい材料も手にしていました。それは#FW11池元友樹選手と#FW18町野修斗選手の覚醒です。この2トップは前線からのプレスと多彩な攻撃の構築というところで大いに貢献していたのですが、無得点の状態が続いていました。しかし第11節のYS横浜戦で揃って今季リーグ戦初ゴールを挙げたのです。

池元選手はYS横浜戦が今季初めてのベンチスタートとなりました。その前のロアッソ熊本戦で8本のシュートを打ちながら1本も決められなかった池元選手を見て、プレーする環境を変えてみようとの小林監督の判断がそこにはあったのですが、指揮官からはあるアドバイスも受けていたと池元選手は明かしました。「なかなかゴールが取れない中で、ていねいにシュートを打とうという意識が働いて、どこか置きにいくようなシュートが増えているんじゃないか、まずは思い切り足を振り抜いて強いシュートを打つことを意識してはどうか、と。確かにいろいろと考え過ぎたかなとも思っていたので、監督に言われたように純粋に強く打つというところに戻ってみようかなと思ったんです」。それでYS横浜戦の左足強振による初ゴールが生まれたのでした。

町野選手はYS横浜戦が5試合ぶりの先発。休養十分とばかりに序盤からプレスに、背後を取る動きにと走り回ったのですが、その足は最後まで止まらず、後半アディショナルタイムに貴重な追加点を挙げたのです。初ゴールによる力の抜け具合が大きかったのは若い町野選手の方で、池元選手の2点目が第15節の長野戦だったのに対して、町野選手は続く第12節・福島ユナッテッドFC戦で2試合連続ゴールを決め、途中出場となった第14節の岩手戦では後半アディショナルタイムに劇的な決勝ゴールを決めたのです。少し時間はかかりましたが、2人の覚醒はその後のチームの戦いに大きく影響することになります。


第16節~第20節
(戦績/1勝2分け2敗)

  • Topic① 真夏の足踏み
  • Topic② 今年も大盛況のギラフェス

IP①
#MF22 藤原奏哉 選手

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第15節のAC長野パルセイロ戦での引き分けを含めての5試合連続未勝利、今季最も苦しんだ時期と言っていいでしょう。後にこの時期を振り返った小林監督は「あの時期、選手の足が動かなかった」と言っています。夏真っ盛りのこの時期、開幕からそれまで攻守でアグレッシブに戦ってきた選手たちに疲労が蓄積、体力的に苦しい時期にさしかかっていたのです。

足が思うように動かないことで、ある状況からのリカバリー能力が低下、第16節のセレッソ大阪U-23戦(1-2の敗戦)と第17節のヴァンラーレ八戸戦(1-1のドロー)では先制、同点後のメンタル面も含めたリカバリーがうまくいかず勝ち越せない、そして試合終了間際に失点を喫しました。同様に、第18節のカターレ富山戦(1-1のドロー)では前半のうちにレレ選手が同点ゴールを挙げながら追加点を奪えず、第19節の長野戦(1-2の敗戦)でも後半序盤に#MF19川島大地選手のゴールで一度は追い付きながら、2分後に勝ち越しゴールを奪われました。このように、この時期は一度ニュートラルに戻した、あるいは戻った状態からもう一段ギアを上げるだけのエネルギーがなく、勝利を手にできない状況が続いたのです。

最も苦しい時期でしたが、チームは前進しようと努めていました。例えば、前線からのプレスの質の向上とともに、相手チームもそのプレスをかいくぐるボールの動かし方を研究してきたので、プレッシングの改造に取り組んだのもこの時期でしたし、試合終盤に失点が続いたのは「ちょっとしたこだわりや敏感さの欠如、そして若手選手の経験不足」(小林監督)ということを選手一人ひとりが認識して練習への取り組み姿勢がさらに厳しくなったのもこの盛夏の頃。そして、小林監督がチームづくりのペースを緩めないと決断したのもこの時期で印象に残っているのが次のような言葉でした。

「勝点を思うように積み上げられない時にいったんプレースピードを緩める、という手段を取る場合もあります。そうすることでミスを抑えることができるからです。しかし今は多少のミスが出てもプレーの高強度、ハイスピードを追求し続けたい。その中でトライ・アンド・エラーを繰り返すことで、プレーの質はさらに向上するものだからです」との指揮官の言葉は、第20節・ガンバ大阪U-23戦での6試合ぶりの勝利(2-1)をきっかけとしたシーズン後半戦の快進撃で証明されることになるのです。

この苦しい時期の明るい話題としては、第18節・富山戦の『ギラヴァンツ北九州サマーフェスティバル』で、今季ホーム最高となる12,270人の観客が集まったこと。夏の恒例イベントである『ギラフェス』もすっかりと定着したとの印象を受けました。

そして選手の中で印象的な働きをしたのが#MF22藤原奏哉選手でした。チームとしてプレッシングの改造に取り組んでいましたが、そこでポイントを握っていたのがボランチの働き。この時期のボランチ・コンビは#MF4川上竜選手と藤原選手で、この2人はプレッシングのリード役として貴重な仕事をしていました。自分のポジショニングを周囲の選手のポジションを見ながら細かく修正することでプレスの効果を高めていたのです。またボールを奪った後の攻撃へのスムーズな移行と、再びボールを失った後に素早く切り替えて、ボールの再奪取に力を注いで、変化と成長を目指すチームを下支えしていたのです。特にどちらかというと大人しいタイプの藤原選手が前後左右の味方選手に声を掛けながら自分主導で彼らを動かすなど、その姿勢に積極性が出始めて、攻守においての存在感が増してきたのが印象的で、その存在感はリーグが進むにつれてさらに大きくなっていくのです。

第21節~第25節
(戦績/4勝1敗)

  • Topic① 補強による第2次ステップアップ期
  • Topic② クラブ連勝記録を「5」に更新

IP①
#DF3 福森健太 選手

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IP②
#FW30 北川柊斗 選手

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足踏み状態の中で取り組んできた質の向上と変化の成果に加えて、新しいエネルギーの注入によって快進撃を見せたのがこの時期です。『新しいエネルギー』としてまずは内部から沸き上がったものがあります。5戦未勝利という苦境の中で迎えた第20節のガンバ大阪U-23戦(2-1の勝利)で小林監督はそれまでの先発メンバーに変化を加えました。第12節・福島ユナイテッドFC戦以来となる#MF20河野貴志選手、第10節・ロアッソ熊本戦以来今季2度目となる#DF3福森健太選手、第6節・アスルクラロ沼津戦以来となる#MF17加藤弘堅選手を先発させたのです。出番を求めて練習からアピールを続けていた3人は、それぞれの持ち味を発揮しながら、チームの好調に貢献したのです。

そして小林監督は夏の移籍期間で3人の新戦力を獲得しました。いずれも期限付き移籍で、#MF28髙橋大悟選手(←J1・清水エスパルス)、#MF29椿直起選手(←J1・横浜F・マリノス)、#FW30北川柊斗選手(←J2・モンテディオ山形)です。第19節までの5戦未勝利の要因を守備面に求めたのではなく、攻撃面にあると見た小林監督の攻撃的選手ばかりの補強策は、今季の『常にアグレッシブに戦う』とのチーム哲学に沿うものでした。

そして、内部と外部からのエネルギー注入は見事に奏功し、第20節まで「1.3点」だった1試合平均得点数が、この5試合は「2.0」と大幅にアップ。第20節のG大阪U-23戦から始まった連勝を第24節のSC相模原戦(3-1の勝利)で「5」に伸ばして、クラブのJリーグ連勝記録の更新にも成功。しかも、ラグビー・ワールドカップの影響でミクスタが使えずアウェイ4連戦中の更新ということで価値はさらに高まりました。

この期間に印象的だった選手の一人が福森選手。これまで右サイドを主戦場としてきた福森選手は、なんと左サイドバックにコンバートされたのです。これは対戦するチームが左サイドを狙ってくる傾向にあったため、その対抗策として「1対1」の守備に強さを発揮する福森選手を左サイドに置いたというのが小林監督の狙いだったようです。そして、右利きの福森選手を左サイドに置くことで、そこから出てくるパスの種類、角度、使えるパスコースが変わり、攻撃に変化が生まれる、というのも理由でした。

このコンバートに福森選手は見事に応えました。「ポジションはどこでもよくて、とにかく試合に出たかった」と出場欲が旺盛だった福森選手は、期待された守備はもちろん、ボールを簡単にはたいて、動いて、前で受ける、という走力を生かした攻撃面でも効果的な働きを見せて勝利に貢献。「右利きであることを生かしながら、時に左足でのプレーも意識的に取り入れて、相手に読まれないプレーを心掛けた」との意識の高さにも驚かされました。

そして福森選手以上に強い印象を残したのが北川選手でした。なんと、初出場となった第21節・ヴァンラーレ八戸戦(3-0の勝利)から4試合連続ゴール、第23節の福島ユナイテッドFC戦(2-1の勝利)は2ゴールを挙げたので計5ゴール、そのすべてが途中出場によるものだったので、その決定力に驚かされました。計98分間の出場で5ゴールという効率の良さは、得点への欲望、そのためのシュートへの強い意識があればこそのもので「山形にいた時にコーチからもっとパスを出すことも考えるようにと言われたことがありますが、僕はまずシュートを狙いたい。シュートを打たなければゴールは生まれないから。シュートあってのパスでしょ?」という、優秀なストライカーには不可欠と言われるエゴイストぶりが表れるコメントがとても印象的でした。

第26節~第30節
(戦績/4勝1分け)

  • Topic① 第12節以来の首位返り咲き
  • Topic② 対沼津戦初勝利
  • Topic③ スタイル完成へ

IP①
#MF17 加藤弘堅 選手

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IP②
#MF28 髙橋大悟 選手

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第25節のセレッソ大阪U-23戦(0-2の敗戦)で連勝記録が「5」で止まったのですが、すでに大きな自信をつけていたチームは連敗をすることはなく、第26節のいわてグルージャ盛岡戦(2-1)から第29節のブラウブリッツ秋田戦(2-0)までを4連勝、第30節のロアッソ熊本との今季最後の九州ダービーを1-1で引き分けましたが、5戦負けなしとして、第27節では過去1分け4敗と未勝利、得点ゼロと苦手、アスルクラロ沼津から初勝利(1-0)を挙げて、第12節以来となる首位返り咲きに成功したのです。

この時期の試合には真の安定感がありました。前からのプレッシングは、行く時と行かない時のメリハリがあり、ボールを奪いに行くタイミングもチームとして統一されていました。ボールを奪った後も、個々のポジショニングの修正が早いから相手に奪われることなくボールを握り、奪われたらすぐに奪い返す切り替えスピードも90分を通して安定。守備を固めてくる相手に対しては、状況に応じて狙いどころを変える、それを相手のスキができるまで焦ることなく継続できる粘り強さも出てきました。小林監督とともに選手が取り組んできた目指すべきスタイルが完成に近づいているんだということを毎試合ごとに感じることができました。今、思い返せば、ビクトリーロードを力強く前進中、そんな時期だったように思えます。

この時期に印象に残っているのはまず#MF17加藤弘堅選手。この時期のチームの安定感に大きく寄与していた選手です。リーグ序盤は先発を務めていましたが、第7節以降はベンチ、あるいはメンバー外になり、自分を見つめ直す時間となりました。その間に小林監督から求められる守備のメリハリと攻撃における展開の速さという部分での改善に取り組み、第20節のガンバ大阪U-23戦での先発復帰、3試合を開けての第24節・SC相模原戦での先発への再復帰で堅実にプレー、第25節の岩手戦で貴重な決勝ゴールを挙げて大いにアピール、第28節のYS横浜戦(3-1の勝利)は警告の累積で出場停止となりましたが、以降は先発の座をがっちりつかみました。

加藤選手はまず全体的な運動量を増やした上で、守備では危険なエリアにしっかりとポジションを取り、球際の争いも負けず、持ち前の読みの鋭さから見事なインターセプトを連発、ボールを持てば、テンポよくボールを動かしてチーム全体の攻撃をコントロールするなど、細かい部分でのレベルアップを図ることで、30歳にして一回り大きく成長したのです。「僕が先発した試合は(33節終了時点で)6節の沼津戦の1敗しかしていない。そういう意味では昇格と優勝に貢献できたかなとは思いますが、8試合ほどメンバー外があり、個人的にはシーズン通して試合に絡めなかったことは物足りなくもある。でも、中抜けしたことで自分自身変化しなきゃいけないと感じて変われたことは良かったと思う」と本人も充実したシーズンだったと振り返っています。

もう一人、印象的な活躍を見せたのが#MF28髙橋大悟選手です。期限付き移籍加入後初戦の第21節・ヴァンラーレ八戸戦でいきなりゴールを決めて存在感をアピールしていたのですが、この時期の活躍の方がより印象的でした。第26節の岩手戦での開始2分の鮮やかな先制ゴール、苦手としていた沼津を相手に挙げた決勝ゴール、続くY.S.C.C.横浜戦でのPKの3試合連続ゴールに、第30節の熊本戦の先制ゴールは、その次のザスパクサツ群馬との上位対決の自身のゴールにもつながるという意味でも貴重でした。岩手戦のように鮮やかなゴールもあるのですが、労を惜しまないランニングや、こぼれ球への予測、プレッシャーがかかる中でも質の高いキックが蹴れることなど、「さすがJ1から来た選手」と思わせるプレー全般にかかわる質の高さには感心させられました。

第31節~第34節
(戦績/2勝1分け1敗)

  • Topic① 2試合を残してJ2昇格決定
  • Topic② クラブ初のJリーグ・タイトル獲得

IP①
#MF8 内藤洋平 選手

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IP②
#MF19 川島大地 選手

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IP③
#MF43 本山雅志 選手

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勝てば自力でのJ2昇格が決まる第32節のカマタマーレ讃岐戦で4-0の快勝を収め、2試合を残しての昇格、4年ぶりとなるJ2復帰を決めると、続くガイナーレ鳥取戦は1-1で引き分けましたが、2位の藤枝MYFCが敗れたことでリーグ優勝を決めました。この2度の歓喜をホーム、ミクスタで長くクラブとチームを支えてきたサポーターとともに味わえたことはとても幸運なことでした。「地道に積み重ねてきた努力がサポーターやスポンサーの方々に喜んでいただけるようなことにつながったことが幸運であり、地味な努力の先に幸運が訪れるということが分かったことは、僕らスタッフ、それから選手にとってはまた幸運なことなんです」との小林監督の言葉は心に残りました。クラブにとって初めてのJリーグ・タイトルはきっと今後のクラブに大きな意味を持つものになるはずです。

昇格と優勝を喜ぶ小林監督や多くの選手の口から出た言葉に「一体感」というものがありました。これはクラブ全体、またサポーター、スポンサー企業の方々がともに戦ったという意味も含めての一体感ではあると思いますが、チーム内での一体感をつくり上げるのに大きな役割を果たした選手たちがいます。なかなか出場機会に恵まれない選手は時に言葉や態度によるネガティブキャンペーンを張ってチーム内の空気を悪くするものなのですが、今季のギラヴァンツ北九州に漂う空気が常に前向きで、個々のパフォーマンス発揮とチームの成長に集中に向かわせるものであったのは、ベテラン選手たちの見事な言動にありました。

#MF43本山雅志選手は今季度重なるケガに悩まされてリーグ戦出場試合はゼロとなりましたが、練習見学に訪れるサポーターの方々やメディアに対して常に明るく挨拶をし、苦しいリハビリも明るくこなして周囲に変な気遣いをさせないような気遣いを見せ、加藤選手が「自分のことで大変なはずなのに、出番がつかめなくて落ち込んでいる自分を励ましてくれるんですよ」と言うように、チームメイトにアドバイスを送り、悩みを聞いたのです。

#MF19川島大地選手は、計6試合(33節時点)で1ゴール(第19節のAC長野パルセイロ戦)と物足りないシーズンとなりましたが、練習では一切手を抜くことなく常に高いパフォーマンスを発揮。第27節のアスルクラロ沼津戦ではレレ選手が出場停止、北川選手がコンディション不良でFWが駒不足に陥ると、トップ下の候補者の一人としてベンチ入り、続く第28節のY.S.C.C.横浜戦では加藤選手が出場停止、川上選手がコンディション不良となるとボランチの控えとしてベンチ入りするなど、そのユーティリティー性を遺憾なく生かしてチームのレベル維持に大きく貢献したのです。

そしてチームキャプテンである#MF8内藤洋平選手は、ケガもあって出場機会に恵まれない中でもシーズン当初に自らが語った「今季はイキのいい若手が多いので、ベテランは彼らを力で押さえつけるのではなく、自分たちの背中を見せることで良い方向に導き、彼らの良い部分を発揮しやすくなるようなサポートをしていきたい」との考えをシーズン通して継続。例えば、練習の全力を尽くすことでチーム内競争のレベルを高め、出場機会が増える若手に対してプレッシャーをかけて良い緊張感を持続させることにも努めたのです。

内藤キャプテンはチームの中のベテランと「今季は『まとまり』を一番大事に考えよう、とことあるごとに話していた」と言います。プレーヤーですからやはりピッチに立ってプレーしてチームに貢献することが何よりも幸せであることに間違いないはずですが、そういう気持ちを持ちながら、でも、チームのためを考えて言葉を発し、行動に表すことの重要性と、その価値を知るベテランがチーム内にいるかどうかが、大きな目標を達成するためにはとても重要なんだ、と知るシーズンとなりました。

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