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シマダノメ

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シマダノメ『見たよ!聞いたよ!練習場で!』Season.2 No.004

個性的なタイプが揃う今季の新人選手の中でも特異な輝きを放つ、ある選手の練習場でのプレーを見て、またリモート取材での言葉を聞きながら、去年、ギラヴァンツ北九州を追い続ける中で「学んだこと」を再び思い出すに至った。『ある視点に立って表現される事象や言葉は、必ずしもその本質であるとは限らない』ということ。
昨季、上位を走り続けた北九州を紹介するメディアにおいては、失点数の少なさから『堅守のチーム』と表現されることが少なくなかった。確かに、シーズンが終わってみればJ3リーグ最少となる27失点を記録したから「守備が堅い」と捉えたくもなる。でも実際はどうだったか。
確かにまだチーム戦術が完全浸透していないシーズン序盤はセンターバックの岡村和哉選手と寺岡真弘選手、さらにGK高橋拓也選手ら経験豊富な選手を軸にした粘りの守備で失点を何とか抑えた試合もあったが、それでも総体的に見れば、『守備のチーム』でなかったことは明らかで、それはシーズンを通してチームを見てきたサポーターの方なら理解しているはず。前線から相手ボールを追いかけて、奪い、高い位置からの攻撃を仕掛けていく。それを連続することで試合の主導権とボールを握り続ける。それはつまり相手の攻撃回数と時間を抑えることであり、それが失点の少なさにつながった。つまり、「堅守のチーム」と表現されたギラヴァンツ北九州の本質は、「アグレッシブで超攻撃的なチーム」だったということだ。
さて、冒頭に特異な存在と表現した新人は、村松航太選手のことだ。開幕後のアビスパ福岡とのトレーニングマッチで村松選手は右サイドバック、ボランチ、左サイドバック、そして最後にセンターバックと、実に4つの守備的ポジションでプレーした。まさに『守備のユーティリティープレーヤー』と表現するにふさわしい能力の持ち主だ。その多様性は小林伸二監督が試合に臨むにあたって限られた数のメンバーを選考する際に大いに助けとなるはずだ。しかし、守備で複数のポジションをこなせるから、村松選手が「守備の人」と捉えるのは早計ではないか、というのが今回のテーマなのだ。まずは以下に本人のいくつかのコメントを紹介する。
「自分の本職はセンターバックだと思っています。実際に高校(清水エスパルス・ユース)と大学(順天堂大学)ではほぼセンターバックとしてプレーしましたから。大学では1年生から試合に使ってもらっていましたが、その時に5試合だけ右サイドバックとして出場しました。ギラヴァンツ北九州に入ってからは紅白戦やトレーニングマッチでボランチとして使ってもらったこともありますが、実は最後にボランチをやったのは中学3年生の時なんです(笑)」
「自分の身長は171センチで、センターバックとしては小さい方です。空中戦に勝てるのか? そう思われますよね(笑)。正直、身体能力も特別ではないので空中戦はあまり得意ではありませんでした。実際に、高校まではセンターバックで相棒となるのは背が高い選手がほとんど。例えば清水エスパルスのユース時代は、いまエスパルスのトップチームでプレーしている立田悠悟(191センチ)が相方で、空中戦は立田に任せて自分はカバー役に徹していました。ですが、大学に入ってからはそうもいかなくなって、いま、湘南ベルマーレにいる坂圭祐さんとセンターバックでコンビを組んでいたのですが、坂さんも僕と同じでそれほど身長が高くなかった(174センチ)ので、自分も競らなきゃいけないということで、かなりヘディングの練習をしました。それでも、身長のない自分が空中戦で競り勝つというのはなかなか難しいので、競り合いには行くんだけれども、うまく相手に体を当てながら、その選手に万全の体勢でヘディングをさせないようにする。競り勝つというよりも、競った後のカバーに入ってくれる味方にセカンドボールを拾ってもらうとかして、相手に有利な攻撃の形をつくらせないこと、ボールを自分たちの物にしてからいかにスムーズに攻撃につなげられるかを意識して跳んでいました」
「跳躍力だけではなくて、スピードも含めて身体能力は普通のレベルですから、いくつかのプレー予測を立てておいて、それに対応できるような準備を常にしておくことは意識しています」
「攻撃につなげるパス、フィード。そこがないと自分は生きていけない。そこがウリです。カットボールというかストレート系の逆回転ボールでのサイドチェンジとかの練習を大学の時から特に意識して練習しています。また、現代サッカーでは攻撃により多くの選択肢とパワーをもたらすために、センターバックが前のスペースにボールを持ち出すことが必要とされているのですが、ただ持ち出すだけではなくて、そこからグラウンダーのタテパスをトップとか、前の選手に入れられるかが大事だと思っていて、そこを特に意識してプレーしています」
中学校以来というボランチをプロの世界で違和感なくこなせるのは正直驚きだが、それは身体能力に頼るのではなく、サッカー脳を駆使した質の高いプレー予測とそれに伴う素早く的確な準備をベースとするプレースタイルの持ち主だからこそ可能なのだろう。それからセンターバックでプレーする際に、カバーリングが主な役割だったと話すが、それはつまり相手FWを間接的に抑えるというよりも、味方に競り合わせてこぼれたボールを素早く回収して自分たちの攻撃につなげる役割を持っていたとも言える。それから自らの売り物だと明言したのが攻撃へとつなげるフィード。それが生命線だ、と言い切った。
つまり、守備のユーティリティープレーヤーとの表現は間違っていないが、村松選手は「守備の人」ではなくて、「攻撃の人」なのではないか。その仮説を、間もなく再開するリーグ戦で確かめられれば、と思っている。村松航太選手の本質は何なのか? みなさんもぜひ見極めてください。

文:島田徹

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