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シマダノメ『見たよ!聞いたよ!練習場で!』Season.2 No.003

シマダノメ『見たよ!聞いたよ!練習場で!』Season.2 No.003

5月19日に、実に4月4日以来となる練習を再開したトップチーム。約1カ月半の自粛期間中にオンラインアプリ「zoom」を使っての自宅での筋トレをはじめ、個人でトレーニングを行っていたものの、一般的にも外出自粛をしている中で、例えばランニングをするにしても30、40分程度で抑えるように小林伸二監督から選手たちに指示が出ていたので「しょうがないけど」フィジカル・コンディションはかなり低下している状況。1月半ばの始動からハードな島原キャンプを経てじっくりと積み上げてきたフィジカルをもう一度つくりなおさなければならないのは、もったいないし、大変な作業になりそうだが、それを言っても始まらない。選手は大変そうだが、岡村和哉選手が「自粛期間は本当に孤独な状況だったので、あらためてチームメイトの大切さ、有難さを思い知りました」と言う通り、チームメイトと一緒に取り組むトレーニングは楽しそうだし、どの選手も充実の表情を見せている。そんな選手を前にマスク姿で大きな声を掛けながら指導する小林監督にリモート取材を敢行。今回の練習場リポートは5月19日と27日に実施した小林監督のミニインタビューの形でお届けします。

―この練習再開序盤のトレーニング内容について簡単に教えてください。

自粛期間も約1カ月半になって、そろそろ体を動かさないと厳しくなるなと感じていた時に、福岡県の新型コロナ感染緊急事態宣言が5月14日に解除されて、練習施設の関係者の皆さんの素早いサポートもあって、19日からの活動再開をスムーズに運ぶことができました。ありがたいことです。練習再開の序盤は、選手を全部で7班(1班、4、5名)に分けて、1日目(19日)4班、2日目(20日)に3班で、それぞれ1時間弱のトレーニングを行いました。内容は30分の軽めのランニングと二人一組でのキックがメニュー。そして3日目の21日には自粛期間中も3日に1回程度の割合で行っていた「zoom」を使ったリモートでの筋トレを実施。22日からは1班7、8名の構成で計3班をつくり、22日に2班、23日に残りの1班で練習、やはりランニングをメインに、グループで行うパス&コントロールを実施。キーパーはGKコーチによる基礎練習を開始しました。グラウンドでの練習がない方の班は午後に筋トレを実施しました。

―24日にオフを取りましたね。

オフをはさんで25日からは12、3名を1班とする2班制に移行して対人メニューも入れて、それぞれ約1時間半の練習。内容はペースを上げた4分1本のランニングを計6本と、グループでのパス&コントロール、2人一組のロングパス、それから6対6の3つのゴールを設置したミニゲームを実施しました。

―練習再開序盤の選手の様子を見て感じることは?

自粛期間中のトレーニングには制限があるのでしょうがないことですが、やはりフィジカル・コンディションは落ちていますね。それとこれも致し方ないことですが、コンディションの個人レベルに差があります。ですから、フィジカル・コンディションを上げて、個人でのバラつきをなくしていく、というのが再開序盤の狙いとなります。

―ゼロからのフィジカルアップは大変です。

確かに「作り直し」ではあるのですが、去年と今年の開幕までに積み上げてきたものがあるので、ゼロからのスタートではないんですね。確かにデータ的に見ても総合的なコンディションは落ちていますが、例えば今日(27日)行った4分を1本にした計6本のペース走の後に脈の戻り方を見ていると、3分間でほとんどの選手が正常値に戻っているので、悪くないんです。

―しかし、戦術面を整理する時間も必要ですよね。

フィジカルもそうですが、戦術面もゼロからのスタートではありません。去年からのやり方を大きく変えているわけではありませんし、チームとして進む方向は見えています。選手のほとんどは去年もやっているので、チームの形をつくりあげるのは、そんなに時間はかからないし、難しくはないと思います。フィジカルが上がれば、スムーズにチームは前進するはずです。難しいのは、コンディションをゲーム用にどう上げて行くか、そのタイミング。それはリーグ再開日が決定して、そこから逆算して、どこにトレーニングマッチを入れるか、どういう相手とするか、ということも含めてのことになり、でもそれは再開日が決定してからの動きなので、今は戦術うんぬんではなく、フィジカルを上げて行くことが大事だと思っています。

―今は焦らず、じっくり、と。

とはいえ、ほかのチームがすでにトレーニングマッチをした、とかという情報が耳に入ってくると、少し急いだほうがいいんじゃないかとの思いもよぎるのですが、でも、フィジカルという「土台づくり」を今しっかりしておかないと、再開後はおそらく厳しい日程での試合となるので、そこで安定して戦いをすることはできないと思うので、まずは動ける体をつくっておくことが大事になるかなと。

―今回の事態は誰もが経験したことのないもので、それにより再開後のリーグ運営にもこれまでなかった変化が生まれそうです。例えば1試合での交代カードが3枚から5枚に増える。昇格はあるが降格はない、など。こういう変化によって予想されるリーグ再開後のチームマネジメントの変化は?

私も経験のないことばかりなので、正直、どうなることやら、という感じではあるんです。例えばJ3への降格がなくなったことで言うなら、自分たちはJ3から昇格したチーム、一方で絶対に昇格を目指しているチームもあるので、そういうところでウチはいろいろな状況を見ながら戦う必要があるんじゃないかと思います。それから交代カードが5枚に増えたことは、連戦となる試合日程を考えて積極的に利用して選手の疲労を抑えながら戦っていくという選択もありながら、でも試合の流れによってはあまりメンバーを代えたくない状況もあるし……。これは実際にリーグが始まってからじゃないと、なかなか分からないですよね。

―試合日程が詰まってくると、試合ごとに選手を大幅に入れ替えるターンオーバー制も必要になってくるのでは?

連勝するとかチームの流れが良い時に「週2回の試合だけどメンバーをあまり変えたくない」と考える監督さんもいるでしょうし、逆にどんどん変えてフレッシュさを求める監督もいるかもしれない。

―小林監督はどちらの選択を?

まだ分かりません。

―選手によりますが、中には「週2回試合があった方がコンディションは整えやすい」と感じている場合もあるようですが?

確かにそういう捉え方もあるんでしょうが、いまのサッカーではどうでしょうか。週2回の試合実施の場合、選手からすれば、次の試合までの練習はコンディション調整がメインで体への負荷が軽いので「コンディションが良い」と感じているのかもしれません。ですが、ウチもそうですが、いまのサッカーの世界は1試合で選手に求める強度がかなり上がっています。90分間を走り切ることが要求される中で、やはり同じ選手を連戦で続けて使った場合、2試合目の強度はどうしても落ちるものなんです。それでは目指すサッカーの実現は難しい。保有選手が少ないチームが戦うリーグなら相対的に相手も強度が落ちるからいいんですけど、J2リーグは保有選手数が増えるから選手の入れ替えで強度を保つことができるチームが多くなるはず。そういうリーグですから、やっぱりコンディションの良い、イキの良い選手を使う方がいいんじゃないか、と考えますよね。

―試合ごとに大きく選手を入れ替えるには選手間のレベルに差があると問題が出てきますよね?

ウチの場合は選手のほとんどが去年からプレーしている選手で、しかもかなりポジション内の競争も激しいものに保ってきたので、戦術理解度を含めて、レベルの差はほとんどありませんから、選手の入れ替えでチームのパフォーマンスは大きく落ちることはないだろうと思います。

経験豊富な指揮官でも今回の事態では未知数な部分がかなり多いようですが、それでもその状況を楽しみにしているような小林監督の落ち着いた口ぶりに、さすがだなぁと感じたリモート取材でした。日常に戻るにはまだ時間がかかりそうですが、久しぶりに見る選手の表情が晴れやかであるのを見ていると、間違いなく日常へと近づいているなとも感じました。

文/写真:島田 徹

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