SHINMOJI KININARINYO新門司キニナリーニョ

新門司キニナリーニョ 第2回
高吉正真 選手

「デュエル王に、オレはなる!」
高吉選手は今季の新体制会見で超人気漫画・アニメの主人公の言葉を模して自らをアピールしました。『デュエル』はすでにサッカーファンにはおなじみ、1対1の状況でのボールの奪い合いや競り合いを指す言葉です。
元日本代表監督のヴァイド・ハリルホジッチ監督のコメントの中で使われて注目され、近年ではシュツットガルト所属の日本代表MFの遠藤航選手がドイツ・ブンデスリーガにおいて2年連続でデュエル勝利数最多選手(デュエル・キング)となったことで日本のサッカーファンに広く認知されることになりました。
いわゆるボール奪取能力が高吉選手にとっての最大の武器であるわけですが、なぜその能力が高いのでしょうか。

「僕がボランチとしてプレーするようになったのは大学3年の夏になってからです。それまではセンターバックとしてプレーしていました。そこで1対1の対応の基礎はできていたように思います。そしてボランチでプレーするようになってからも意識しているのは、まず相手の特徴を理解すること。アタッカーを大きく分けて3タイプに分類します。足が速い選手。ボールテクニックが高い選手。フィジカルコンタクトが強い選手です」

タイプ別の対処法があると?

「足が速い選手に対しては、少し距離を取って速さに対応できる準備をします。そして、あくまでも僕の感覚ですが、スピードが武器の選手は圧力を掛けた時に技術の質が落ちることが多いので、その瞬間を狙ってボールに足を出していきます」

「ボールテクニックが高い選手は、これもあくまで僕の印象ですが、フィジカルコンタクトにあまり強くない。だから、グッと身体を寄せて圧力をかけるとバランスを崩してミスタッチをします。そこで一気に奪います」

「フィジカルコンタクトに強い選手は、僕が身体を当ててもその圧力に耐えることができますし、またその圧力を利用して身体を入れ替えて前を向く余裕も持っています。だから、無理をして寄せずに、少し間合いを取っておいてボールが足から離れた瞬間に奪いにくようにしています」

なるほど、なるほど。そしてもう一つ気づくのは高吉選手の上半身のたくましさです。それもデュエル王になるためには欠かせないのでしょうか。

「ボールを奪うためには身体の強さも必要だと思います。だから全般に鍛えています。でも僕が思うに腕が特に重要かな、と。相手の動きを腕の力で制しながら、自分の身体を相手とボールの間に滑り込ませて奪うんです」

岐阜との開幕戦の序盤は緊張のため身体が硬くなり、思うようなデュエル戦を展開できませんでしたが、堅さが取れた後半戦、そして後半に劣勢の時間が続いた第2節の讃岐戦では持ち前のボール奪取力を随所で発揮していました。そうした高吉選手のプレーを見ていて気づくことがあります。それはボールを奪った後のことです。

「せっかくボールを取ったのに、その後にパスミスをすると、また守備から始めなければならない。それは良くないループ。だから、ボールを奪うことも大事ですけど、奪った後に味方に正確につなげられるか。さらに言えば、どこにつなげられるか。僕はそこを大事にしています」

奪った後にボールを正確に味方につなぐ。そのパス精度が高いのは、やはり『止める、蹴る』の基礎技術の高さが際立つ川崎Fというチームのアカデミー出身者だからなのでしょうか。

「僕はフロンターレのU-18出身ですが、その時は『止める、蹴る』の練習はそんなにしていませんでした。桐蔭横浜大に入ってからです。フロンターレのトップチームの『止める、蹴る』の練習の動画を見て、一つ後輩でボランチのコンビを組んでいたヒナタ(山内日向汰選手=現在・桐蔭横浜大4年生で24年シーズンの川崎F加入が内定。高吉選手と同じく川崎Fのアカデミー出身)と、いわゆるパス・アンド・コントロールの反復練習を始めました」

「センターバックでプレーしている時は、そこまで緻密なコントロールは必要なかったのですが、相手の圧力が強まる狭いスペースでプレーするボランチにはその技術の高さが求められます。ボールのおきどころを意識して反復練習を重ねるうちに、次のパスを蹴りやすい位置に止めて正確なパスを蹴ることができるようになりました。でも、まだまだ不十分。だから今も個人練習が欠かせません」

ボールを奪った後に得点につながるような攻撃の起点となること。まさに攻守の要となる存在へ――。単なるデュエル王にはとどまらない、高吉選手の高い目標へのチャレンジにぜひ注目してください。

[文:島田 徹]

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