SHINMOJI KININARINYO新門司キニナリーニョ
新門司キニナリーニョ 第7回
木實快斗 選手

今季、セレッソ大阪からの育成型期限付き移籍で加わった木實快斗選手は第7節・ザスパクサツ群馬戦でリーグ戦初先発を果たすと、第11節・栃木SC戦から6試合連続で先発出場。新人らしからぬ働きの秘密をキニナリーニョしてきました。
ここまで左サイドバックとしてプレーしている木實選手ですが、そこが本職ではないことにまず驚かされます。実際に今季開幕前の島原キャンプではボランチ、トップ下などでプレーしていました。
「セレッソ大阪U-18まではボランチとしてプレーしていました。トップチームの練習に参加した時は、サイドバックをすることもありました。」」

練習やトレーニングマッチを重ねる中で増本浩平監督は木實選手を左サイドバックで試し始めます。指揮官は木實選手の推進力、左足のキック精度、1対1の守備の強さがサイドバックで十分に通用する、それどころか「面白いことになりますよ」と、その潜在能力に目をつけたようです。
そうした特徴はボランチでプレーする時の武器でもありました。相手ボールホルダーへ素早く寄せてボールを奪取する能力、質の高い左足キックでボールを展開し、ボールを奪えば一気に相手ゴールに向かう。
そういう意味で、木實選手は大きな違和感もなく左サイドバックのプレーに挑戦した、と言えそうです。もちろん、ボランチとは異なる部分があり、コンバート当初はその調整に苦労したようです。

「まず守備面では一つの判断ミスで失点に絡むポジションなので、常に緊張感を持って、アンテナを張ってプレーしなければいけないと強く感じました」
「サイドバックとして練習試合に出た時に裏を取られてピンチに直結する場面がありました。そこは自分の中で悩んだ部分。ボランチの時にはボールホルダーに強く行くことを意識していましたし、それが自分の武器の一つでもありましたから」
「いまは裏のスペースを意識しながらも、相手の足下にボールが入ったら強く、積極的に行く、そのバランスを意識しています」
木實選手が公式戦での初先発を果たしたのは3月20日のルヴァンカップ1stラウンド1回戦のファジアーノ岡山戦でした。
このゲーム、試合開始から対峙するアタッカーに鋭い寄せを見せた木實選手でしたが、簡単にかわされる場面が目立ちました。
しかし、試合開始10分で、鋭く寄せる時と背後を取られないように間合いを取る時のバランスを見事にコントロールしたのです。そうした調整力もルーキーらしからぬところの一つでしょう。
その岡山戦で初先発してチームが勝ったことを喜んだ木實選手ですが、そのゲームには相当の気合をもって臨んでいたようです。その理由は……。
「僕は今年、セレッソ大阪U-18からトップチームに昇格したわけですが、その時に『J1でプレーできるだけの技術レベルではない』と言われました」
「それがとても悔しかった。だから北九州で多くの試合に出場して、経験を積み、レベルアップを図ろうと思いました」

「そしてルヴァンカップでJ1の岡山と対戦することになり、先発出場のチャンスを与えてもらいました。そのゲームはセレッソの関係者も見ているだろうし、そこでしっかりプレーできることを見せたかった」
この岡山戦でのパフォーマンスがその後のリーグ戦での先発出場につながったことは間違いないでしょう。ただ、この18歳は天狗にもならず、レベルアップに向けた意欲は依然として高いままです。
「まだ完全に定位置を確保したといえる状況ではありません。だから、これからも増本監督から、チームがどういう状況にあっても、またどんな特徴を持つ相手でも、常に必要とされる選手になる。ずっとスタメンで出たい」
今季、木實選手と同様に高校卒業と同時にチームに加わったルーキーが二人います。天皇杯2回戦・岡山戦でプロ公式戦初ゴールを挙げて勝利に貢献した吉原楓人選手と、その岡山戦で途中出場ながら今季公式戦初出場を果たした世良務選手です。
仲間であり、ライバルでもある二人との関係の築き方も18歳とは思えない、プロらしいものです。
「同期に抜かれたくないという思いはあります。特に世良は同じサイドバックとしてポジションを争うから負けたくない。練習では常に『自分が一番』という思いを持ってトライしています」
「でもピッチを離れればとても仲は良い。ご飯も一緒に行って、いろいろなことを話して、笑います。グラウンドでは刺激しあい、サッカーを離れれば仲良く。そのメリハリはしっかりつけることができています」
木實選手の実家は熊本。小倉とは新幹線で約1時間の距離なので、ご両親もミクスタに観戦に訪れている様子。そして「まだまだこれからだな」と言われるそうです。
「僕はその言葉を厳しいものだとは思っていません。その通りだな、と思うので」
まだ18歳。しかしサッカーに取り組む姿勢や自身の立ち位置を客観的にとらえられるところなど、プロとして将来有望な『骨格』が整っていること、また18歳とは思えない人間としての芯の強さを感じます。
ここからの成長と変化が大いに楽しみなカイトにぜひ注目を。

[取材・構成:島田 徹]
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