SHINMOJI KININARINYO新門司キニナリーニョ

新門司キニナリーニョ 第1回
伊東 進之輔 選手

2024年の今コーナーの第1回目で登場していただく選手を誰にしようかについては、大いに悩みました。加入2年目の選手たちの昨季の不振を受けての今季に懸ける思い、また今季新戦力たちのパーソナリティーも大いにキニナリーニョなのですが、やはりこの選手に聞きたいと思い直撃してきました。

静岡学園高校卒業のルーキーとして2022年にギラヴァンツ北九州に加入、今季で在籍3年目となる伊東進之輔選手です。同じ高校卒の同期は井野文太選手と平原隆暉選手です。

伊東選手は昨年夏にクラブとしては初めての育成型期限付き移籍で他チームでのプレーを経験しました。その武者修行で何を感じたのか、何を得たのか、それを踏まえての今季に懸ける思いを聞きたかったのです。

伊東選手は昨年7月8日のリーグ戦第17節のいわてグルージャ盛岡戦でJリーグ・デビューを果たしました。平原選手との交代でピッチに立った時間は公式記録上では1分間であり、また同期の井野選手と平原選手から1年ほど遅れてのデビューではありましたが、やはり特別な喜びを感じたと言います。

しかしデビューによってメンタル的に大いに上がったにもかかわらず岩手戦以降もメンバー外の時間が続きます。そして移籍を決断するのです。

「気持ちの面もそうですし、フィジカル的な部分でのコンディションも上り、パフォーマンス自体も良いと自分で感じていたので、とにかく試合に出たかった。だから下位カテゴリーのチームでしたが、移籍させていただくことにしました」

伊東選手が出場機会を求めて移籍したチームは中国リーグを戦う、広島県の福山シティFCというチームでした。福山はその年の中国リーグを18戦全勝で優勝を果たしますが、伊東選手は10月1日の第4節・NTN岡山戦での後半開始からの途中出場のみのプレーとなりました。

「8月の終わりに加入したのですが、2週間後にお尻の付け根の筋肉を痛めて戦線離脱。それでデビューに時間がかかったこと、その後もなかなかチームに溶け込むことができないままシーズンが終わってしまいました」

福山の選手たちはすべて社会人として働きながらのプレー。ピッチ外での時間をともに過ごしながら関係を深めることも難しく、またプロとは異なる練習時間、練習体系の中で負傷後のコンディションもなかなか上がらなかったということです。

自らが志願した移籍で思うような結果が残せなかった悔しさが大きい分だけ、今季に懸ける思いは強くなったと言います。

「去年の移籍では途中からチームに入ることの難しさを感じましたし、そこでの自分のコミュニケーション能力のなさ、人間としての精神的な強さも足りないと感じました」

「だから、今回ギラヴァンツ北九州に復帰させていただくにあたっては、自分なりに強い覚悟を持って臨んでいます」

定位置確保に向けての課題として、対人場面での甘さと粘り強さ、さらにビルドアップ時の判断の質向上などを挙げる伊東選手の覚悟の強さを感じたのはこんな言葉からでした。

「ルヴァンカップ・大分トリニータ戦ではゲームクローズという役目を担って終盤に出場して、小さい貢献だったとは思いますが、チームの今季公式戦初勝利に携わることができました」

「大分戦での僕のメンバー入りは、増本監督の頭の中にある戦略を実践するにあたってのチョイスだったと聞いています。それを僕はとてもうれしく感じました。そういう役割を負うこと、託されることに監督からの信頼を感じながら、そのための取り組みをこれからも地道に積み上げて行こうと思いました」

加入1年目で「鼻をへし折られた」とプロの厳しさを知り、メンバー外になることが当たり前だと感じるようになった伊東選手は、2年目で同期の井野選手と平原選手が出場機会を重ねていく様子をうれしく思いながら、でも悔しさも感じて、移籍による武者修行に出る決意をしました。

そして移籍先で己のひ弱さ、不甲斐なさを感じるという悔しさも味わったことで、心の炎を燃やしたのです。大きな悔しさを、大きなジャンプによって一気に晴らそうとするのではなく、地道でもいいから一歩ずつ階段を登ることで払拭し、それによって求める結果へと近づいていく。

そういう現実的な姿勢を持ちながらのチャレンジを選んだところに、伊東選手の「3年目の覚悟」を感じ取ることができました。

[文:島田 徹]

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