SHINMOJI KININARINYO新門司キニナリーニョ
新門司キニナリーニョ 第9回
吉長真優 選手

今季、J1のジュビロ磐田から育成型期限付き移籍で加入、第10節・相模原SC戦での初出場のあと、徐々に出場機会を増やしてきた吉長真優選手にここまでの道のりと、質の高い攻撃プレーの秘訣をキニナリーニョしてきました。
吉長選手の名前は『真優』と書いて『まひろ』と読みます。その名前の由来を聞くと「真っすぐで優しい人になってほしいという願いを込めた、と両親から聞かされています」との答え。その名前をもらって23年、ご両親の願い通りの人になったのでしょうか。
「優しい人間ですか?」との問いに「さあ、どうでしょうか」と恥ずかしそうに答えるのは当然でしょうか。「ハイ、優しいです!」と答えられてもうさん臭く感じるだけでしょうから。ということで周囲の証言を拾いました。
普通自動車免許取得前だからと、吉長選手が練習場への毎日の送り迎えをしていた世良務選手に聞くと「優しいです。送り迎えをしてもらっているからだけではなく、常に優しいです」とのこと。
吉長選手は優しい人間として成長したようです。では『真っすぐに』という部分に関してはどうでしょうか。
今季の初出場が第10節のSC相模原戦となった理由の一つは昨年に負ったケガの影響でもありました。
「2024年は出場機会を求めてJ3のカマタマーレ讃岐に期限付き移籍をしましたが、シーズン開幕2週間前の練習試合で左足のハムストリングの肉離れ。その回復に時間もかかり、結局、リーグ戦3試合の出場にとどまりました」

さかのぼってプロ2年目となる2021年、磐田に在籍中の7月初めに右足ハムストリングに肉離れを起こしています。そうして2度もシーズンを棒に振った経験から、今季序盤はかなり慎重にコンディションアップに努めたと言います。
「ケガの再発に注意して調整が慎重になった分、少し出遅れた格好になりました。その時は少しもどかしいものがありましたが、徐々にコンディションも上がって自分の特徴を出せるようになりました」
そのように相模原戦までを振り返った吉長選手は第14節・テゲバジャーロ宮崎戦から第17節・高知ユナイテッドSC戦まで4試合連続で途中出場。
宮崎戦では後半アディショナルタイムに渡邉颯太選手の貴重な同点ゴールを精度の高い左CKでアシスト。高知戦では一時2-2とする同点ゴールを決めました。
その2試合の活躍もあり、第18節のガイナーレ鳥取戦では今季初先発を果たしました。このあたりの流れを振り返ってもらいました。
「自分のイメージと実際のプレーと動きが合ってきたと感じたのは相模原戦で初出場を果たした後くらいからですね」
「去年1年間プレーできなかった苦しさ、悔しさを知ったうえで、試合に出ることが当たり前ではないことも理解していたので、途中出場でも試合に出る喜びを感じていました」
「その中で取った高知戦での初ゴールは、遠回りしてきたけど、しっかりやってきて良かったと思えるゴールとなりました」

高知戦での初出場につながったのは、アシストとゴールのおかげでもあったはずですが、吉長選手は守備力の向上も影響しているだろうと考えています。
「前線へ上がっていくのは自分の特徴ですが、それをした上でしっかり守備に戻ることもできないとやはり先発では使ってくれない」
「その課題に練習からしっかり取り組み、守備に戻れる体力もついてきました」
主に右サイドハーフとしてプレーする吉長選手の特徴は、ドリブルの仕掛けにより発揮する推進力、精度の高いクロス、そしてシュートへの積極性です。
シュートの意識が高いことに関して吉長選手はこう言います。
「高校の時はFWでプレーしていました。FWの中でも特にシュートへの意識が強いタイプで、前を向いたらとにかくシュートを打つ」
「シュートを打つためにドリブルも磨いてきました。その頃の姿勢と意識がサイドハーフでプレーするようになった今でも残っているんだと思います」

クロスはほかの人とは違うタイミングやコースで入れる技術とアイディアは詰め込まれています。
「磐田でサイドハーフの同じポジションの選手が質の高いクロスを入れていて、当然、それは試合にも出るので、自分もできなきゃと思い、先輩にいろいろと教えてもらいながら練習に取り組みました」
「例えば、僕が対峙する左サイドバックの選手に、こういうふうにドリブルで仕掛けられたら嫌だな、こういうタイミングでクロスを入れられたら嫌だな、ということを聞かせてもらう」
「それをもとに自分で考えながらやるようにした。とにかく相手が嫌がるプレーは何かを常に考えながらポジションを取り、プレー判断をするようになりました」
『相手が嫌がることをやる』――その言葉だけを聞くと、とても良い人間とは思えませんが、それがサッカーの世界においては勝負に勝つ、そこで自分をしっかり表現するための重要なカギとなるのです。
そのカギを使って自分の可能性を広げ、成長につなげようとする吉長選手はサッカーに対して『真っすぐ』であると言えます。
「もっと試合に出て、もっとアシストや得点という数字を残したい」と真っすぐな目で話す吉長選手はリーグ再開後の注目選手の一人です。

[取材・構成:島田 徹]
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